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Who’s who ◆石井敏資さん(在仏ギタリスト)

ぽかぽかてんぽ 第二回目のお客様は、フランスで長く活動されているギタリスト、石井敏資(Toshiji ISHII)さんです。演奏会、レッスンと多忙な日々の合間をぬってインタヴューに答えてくださいました。そして、クラシックギターを勉強中の私たちに、とてもいいアドヴァイスをいただきました。
※石井さんのHPはフランス語ですが、Biographie→1番下のPress Book Jp で日本語のプロフィールをより詳しく見ることができます)
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・ギターをはじめたきっかけは?
今は亡き父親が若い時代ギターが大好きで、子供の頃から家に沢山あったギターをおもちゃ代りに遊んでいました。小学生の10歳頃、真剣にレッスンを受けてみるか?と聞かれて、
OUI !じゃないか・・・ はい!って返事したのを今でも覚えています。

・使用楽器を教えてください。

YAMAHA GC70C 1985年製。ヤマハの海外向けに製作されたグランドコンサートモデルで、パリ・ギター・トリオで活動時代に、ヤマハ・フランスとパートナー関係を結んで以来使っています。もう1本、スペインギター製作家リベルト・プラナスさんの、トーレスの1882年レプリカを去年から隠れて弾いていますが、なかなか、まだ人前で弾ける段階に至っていません・・・。
この楽器の表面板は、アメリカ合衆国のイエローストーン国立公園で育った樹齢1800年のセコイヤで、これからどのように発展して行くのか楽しみです。

・好きなプレイヤー、CDなどがあればお教えください。

ギターも含めて、あまりにも素晴らしい演奏家が一杯で答えるのが大変難しいです・・・。
あえて言うならチェロ奏者のヨーヨー・マの自由奔放なドボルジャークのチェロ協奏曲や、ヴァイオリン奏者ヘンリク・シェリングによるバッハの無伴奏ヴァイオリンのための作品が大好きです。あっ!忘れてました・・・パコ・デ・ルチアのアレグリアス・・・。

・ギターはなぜ難しいのでしょう

理由は、本当に沢山あると思うんですが、こちらで、よくギターは infidèle な楽器だと言われます。
不誠実とか、不貞な、という意味ですが、実は、別にネガティブな意味ではなく、要するにいくら一生懸命時間をかけて練習しても、少しでも休むとすぐに弾けなくなってしまう・・・恩知らずな楽器・・・みたいな意味です。楽器の持ち方、右手のタッチ、左手の運指だけとっても膨大な可能性。しかも4度と長3度が混在した調弦によって、耳に聴こえる和音や音のインターバルと左手の運指が必ずしも共通しない非論理的な楽器。メロディーからバス、伴奏と、それらを全部含めたソロ演奏・・・しかも、ルネッサンスから現代曲、ワールドミュージックに至るまで、あらゆる音楽が何らかの形でギターと深く関係した音楽史・・・。
暗黙のうちにギター演奏家に求められるオールマイティーな知識や能力・・・。ギターには、そんな深い歴史と大きな未知の可能性が混在した魅力的で不思議な楽器・・・。むずかしいのは当たり前か・・・?

・ギターをやっている人に励ましのメッセージを

ギターテクニックの非合理性と複雑さによって、どうしても、音楽を表現しようとする段階に至るまでに時間が掛かり過ぎてしまうように思うのです。どうやれば、その時間を短縮できるか・・・?左手の運指一つにとっても、何を基準に決めるのか・・・。その日の気まぐれではなく、自分なりのテクニックをある一定の理論を基に体系化して行く事に少し時間を費やしてみてはどうでしょうか・・・?ギターほど未知の部分の多い、でも、魅力一杯の楽器を自分のものにしたければ、頭を下げて突進するよりも、冷静に作戦を立てて見るのも良いんじゃないでしょうか・・・?

・フランスでの生活は気に入っていますか?

そうですね・・・。気に入っていなかったら、もう24年も住んでいないでしょうね。
実は、最初ニースに3年間だけ留学するつもりだったんです。それが、いつの間にやら24年になってしまいました・・・。しかも、昨年フランス国籍まで取得してしまいました・・・。
やっぱり、私たちのようなヨーロッパ音楽の演奏家は、こちらに住んでいた方が、
便利な部分が多いと思います。語学も勉強して、ヨーロッパ人と交流することによって、歴史や文化を肌で感じること。そうすれば、どうしてこのような音楽が生まれたのか、
どのように演奏されるべきなのかが少し分かるような気がします。あらゆる芸術も、音楽も、また、語学も、結局のところ、人間の内的な部分を表現するための手段である観点から、実に共通する点が多いと思います。
また、こちらでの音楽家の社会的地位が、ある程度確立していて、演奏家や教員の免状を取得すれば、フランス全土にある音楽学校で教職がとれるようになっています。フランスの国や地方自治体が、音楽教育システムを体系化し、フランス全土に音楽学校として配置しようという意志があるようです。

という訳で、ギタリストとして演奏しながら、ギター教員として給料をもらって生活出来ます。音楽から離れた現実的な話になってしまいました・・・。済みません。

・ギタリストとして芸術を追及しながら、生活の安定も可能であるうらやましい環境ですね。
ありがとうございました。更なるご活躍を期待しています。



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●石井敏資(いしい としじ)さん プロフィール

1963年、大阪に生まれる。幼少から父の手ほどきでギターをはじめる。
1975年からギターを西垣正信氏に師事し、1985年に高松短期大学音楽科ギター専攻を卒業。同年フランス留学を決心しニース国立音楽院でアコ伊藤、アンリ・ドリニ夫妻に師事。ニース国立音楽院在学の2年間、多くのコンセルティスト、アリリオ・ディアス、アルベルト・ポンセ、ローラン・ディアンスなどのマスタークラスに積極的に参加。また、ヨーロッパ・ギター学院主催のヴィラ・ロボス国際コンクールのフランス代表に選ばれる。1987年パリ国立音楽院に入学しアレクサンドル・ラゴヤに師事。1992年にパリ国立音楽院を一位で卒業。続いて1994年にパリ市立エリック・サティー音楽院でコンセルティストライセンスを取得。パリ国立音楽院に在学中、ミッシェル・サダノフスキー主催のパリ・ギター三重奏団の第2ギターと抜擢され演奏活動を開始。これを切欠に、2000年にトリオを退団するまでの約11年間、トリオ、デュオ(ラ・リュースギター二重奏団)、ソロ、または、その他の楽器とのアンサンブルやオーケストラとの共演など、世界各地30ヶ国以上で500回以上のコンサートをこなす。2003年にフランスギター教員国家免状を取得し、現在フランスのオワーズ県ノワイヨン市音楽学校、エンヌ県のサン・コンタン県立音楽学校とテルニエ市立音楽学校で後進の指導にあたっている。これまでパリ・ギター三重奏団として3枚アルバムを録音。2000年と2003年にはソロアルバムを出す。
by pokapokatempo | 2009-06-17 18:37 | Who’s who

ギターをこよなく愛す 倉石アオミの日々つれづれ


by Aomi